おはなし《魔女の呪いと“カラフルまじょ。”》
彼女の住む世界は、とても平和でした。
けれども国は、そうではありませんでした。

ひとりの魔女による呪いが、ひとつの国を包み込んでいました。
魔女の呪いによって魔物が生まれ、それと同時にその国の住民もまた
特別な力を発現するようになりました。
ところが王は、その呪いを拒否するよりも受け入れることにしました。
規律を定め、制度を整え、そうして国を発展させていきます。

男性なら“まどうし”、女性なら“まじょ”。
階級も細かく定められていますが、“まどうし”より力を強く持つ傾向にある“まじょ”の方が
位は高いのでありました。

しばらくの時が流れ“呪い”から“魔法”となった……そんな中。
生まれたのは後に《カラフルまじょ。》と呼ばれるまじょです。
彼女は普通の女の子。父は絵筆作りの職人、母はパイ作りの名人でした。
普通にご飯を食べて、普通に友達と遊んで……当たり前の毎日を送っていました。
しかし、その日常を、呪いは当たり前にとって代わり、彼女は“まじょ”になりました。

父も母も、喜びます。彼女も大喜びです。
そして立派な“まじょ”になるため、父の作った杖代わりの大きな絵筆と
母の作ったパイを持ち、旅に出ました。
辛いことや悲しいこともありましたが、彼女は普通にご飯を食べて、普通に仲間と語り、
普通に魔法を使い、当たり前の毎日を送りました。

いつしか彼女は、とても立派に成長し《カラフルまじょ。》の称号を得ます。
彼女はとても嬉しくて、墓標に眠る父と母に報告しました。


そうして数年が経ち、彼女はある日、王より命を受けます。
それは、魔物の討伐でした。その魔物はとても強く、多くの犠牲が出ており、
国中の人々が恐れていました。

そんな魔物を放っておけないと彼女は快く引き受け、仲間と共に出向き、
手ごわいながらも魔物の討伐に成功しました。
彼女とその仲間たちは国中から賞賛され、より一層、尊敬されるようになりました。

凱旋のまばゆい光と人々の歓声の中、仲間たちは清々しい表情で手を振ります。
しかし、そこに彼女の姿は、ありませんでした。



時は流れ、とある森の奥。そこには赤いレンガでできた小屋があります。
――あれ以来、彼女は森の奥に住むようになりました。

国からの依頼はありますが、それも少し引き受けるだけ。
今は、好きなパイを作りながら、のんびりと暮らしているようです。


そんなある時、王から命が下ります。
彼女が重い腰を上げて謁見の間へ赴くと、それは意外な命でした。
王は、あの時と変わらず、玉座から言い放ちます。

 『この赤ん坊を、預かってほしい。そして――』

彼女は快く引き受けました。いいえ、あの時とは違う。自ら願う。
彼女は決意します。

――どんなことがあっても、この子の側を離れないと。

こうして、赤ん坊と彼女の生活が始まりました。
赤ん坊には、“まじょ”の素質がありました。
彼女は、その小さな命に名前を与え、弟子として育てることにしました。

赤ん坊はすくすくと育ち、やがて《しろくろまじょ。》へと成長していきます。
そうして物語は《しろくろまじょ。》へと引き継がれていくのですが――それはまた、別のおはなし。
2013/03/18(月)
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